
10週間にわたるプロジェクトが終了しました。プロジェクトの内容は、ビジネスを始めたいというNGOのためにビジネスアイディアを出して、ビジネスプランを作るというものでした。結局、Web上であるサービスを売ることに決まって、クライアントも満足してくれたようなので、とりあえずは良かったです。ただ、NGOは初期投資で資産を増やして、それを使って収益を稼いで行く、毎期販売計画を立てて、みたいなビジネスマインドそのものが無いので、ビジネスアイディアそのものよりはそのあたりのインプリのプロセスをかなり細かく説明したビジネスプランになりました。このビジネスを成功させるために今の組織に足りないものをかなりずけずけ書いたものを出したので、結構クライアントにとっては渋い内容だったかもしれませんが、お互いにぬるいものを作って、自己満足で終わるよりは良いと思っています。
疲れたけど、面白かったです。ここ1年でフルコンプリートのビジネスプランを書いたのはこれで3回目になりますが、書けば書くほど良い物ができあがってきます。ビジネスモデルも欠陥がたくさん見つかって、それを補うためにする工夫とか試行錯誤するきっかけになります。右脳左脳総動員で考えまくりでしたが、思考訓練としても良いきっかけになりました。
さて今回は備忘録を兼ねてですが、どのようにビジネスアイディアを生成して、ビジネスプランを作り上げていったかをメモ書きします。所詮MBAの卵がやったもので、どこまで使えるか疑問ですが、これから起業を考えているけどアイディアを作る段階という人に少しでもお役に立てればと思います。ビジネスプランニングに興味が無い方はここから先は無視してください。
1;クライアントの要件をヒアリング。NGOがビジネスをする上での問題点などをHarvard Business Reviewなどの学術ジャーナルとかから収集する。これらからそのビジネスが満たすべき要件をリストアップする。今回のケースでは低予算、そのNGOの活動とある程度リンクしていること、ある程度の需要が見込めることなどが要件として挙がった。
2;1の要件をベースにして、イギリスのマクロ経済の状況などを大まかに調べる。どのマーケットが延びているとかざっくり。
3;個人のブレインストーミングを開始。ビジネス機会になりそうなものをとにかくたくさん出す。この際に、Kim and MauborgneのBoundary-hopping frameworkを使う。これは既存のビジネスから新しいビジネスを作りたい時に、既存のビジネスが確立してきた前提条件を変えてみるというものです。具体的には、
−代替産業(Substitute Industries)
−異なるカスタマーグループ(Alternative Strategic Group)
−タイミング
−購入者への機能面・感情面へのアピール(Functional and Emotional Appeal to Buyers)
−異なる購買決定層へのアピール(Non-conventional parts of the buyer chain):例えばBloombergはそれまで情報技術マネージャー対象に売っていた競合ではなく、投資アナリスト向けに番組を売って成功したとか
−補完製品(Complementary products and services)
の6つを取り替えてみて、ビジネスチャンスがあるか探します。これはブレインストーミングを発展させて行く時に役に立ちました。後は、ネタがたくさん出てきてごちゃごちゃしてきたらイシューツリーを使って、ビジネスを分類すると、そこにツリー化されていないものなども考えることになり、思考が深まります。
4;似たような関心を持ったMBAの人達とブレインストーミングをしてネタを提供してもらう。大体の背景を説明して、1の要件も説明して、ネタを提供してもらう。この時点でネタは100個近くまで膨らみました。
5;Osborn Checklistというフレームワークを使って、ネタをくっつけたり、増やしたりする。これはビジネスアイディアをadapt,modify,magnify,minify,substitute,rearrange,reverse,combineの8つのどれかに当てはめてさらに発展させられるか考えるというものです。似たようなものはcombineしたります。
※アイディアを練る上で個人的に役に立ったと思ったのが、イシューツリーとOsborn Checklistの組み合わせです。イシューツリーそのものも考えを整理したり、捻り出すのに役に立ちますが、Osborn Checklistで色々な角度から検証すると更にツリーがしっかりしてきます。
6;1の要件に照らしてパッと見て明らかに反しているものは落としたり、マージさせてスクリーニングする。最終的に20個ぐらいまで減らす。
7;6の10個に対してCriteria Gridを作る。これは各アイディアを1の要件に関して5段階で点数付けします。合計点が最も高いものがビジネスとしてある程度可能性が見込めるものとなります。ここでは逆に点数の明らかに低いビジネスを捨てるために使いました。最終的にネタは7つまで減ったので、それぞれのアイディアを1の要件に関して、なぜ選んだのかをレポートにして、クライアントに提出。
8;クライアントから「もっとこうして」「こんなのも良いんじゃない」という注文が来るので、それを元にまた3-7のプロセスを繰り返してアイディアを練る。最終的にネタは3つに絞られました。
9;クライアントがその中から1つ選択して、とりあえずビジネスのネタ出し部分は完了。次はマーケティングプラン。低予算でNGOがやるようなビジネスは大抵、もう競合が存在するので、その競合が手を出していないニーズにフォーカスするしか生き残る道はないので、マーケットリサーチは非常に重要。マーケットリサーチは以下の内容を調べる。
−そのビジネス関連のマクロ経済:P(Political)E(Economic)S(Societal)T(Technological)L(Legal)E(Environmental)のトレンドを見る
−その産業のマーケットサイズを既存のジャーナルやWebリソースから見積もる。Porter's 5 Forcesを使って、その産業のRivals,Suppliers,Buyers,New Entrants,Substitutesを調べて、全体的な質的な構造を捉える。
−Key Customer Valueを探す。これは実際の潜在的な顧客にヒアリング。そのビジネスにどんなものを顧客が求めているのか満たされていないニーズを探す
−そのNGOの組織的な強み弱みを見る。7s(SharedValue,Strategy,System,Structure,Style,Staff,Skills)の角度から多角的に何があって、何が無いか、無いものはどうやって作って行くかを検証。
−競合分析。代表的な競合のポジショニング、強み弱みをチャート化する。
10;マーケティング戦略構築。潜在顧客を年齢や消費行動からセグメント化。9の分析から客のニーズや競合が手を出していないところを検証して、どのセグメントにどんなポジショニングで売るかを決める。ターゲットにしたセグメントのそれぞれのニーズや競合、取るべきポジショニング、潜在需要などをチャートにまとめる。
11;売り上げ予想を立てる。ここは仮定に基づいて出すしかないので、「3年間で特定セグメントでシェア1%」とか実現可能な目標を決めうちで、3年でどれだけの収支予想になるかをエクセルで出す。予測損益計算書、予測貸借対照表を作る。損益分岐点売り上げを計算する。
12;11の売り上げ予想を元にマーケティング予算を出す。大体売り上げの10-15%ぐらいが一般的な標準予算。
13;マーケティングミックス(Price,Product,Distribution,Promotion,People)をどのように進めて行くかを考える。プロモーションに関しては12の金額から、使える予算が決まるので、その範囲でできるプロモーションを考える。Web上のビジネスだと、ViralMarketingとかオンラインPRとかEmailマーケティングとか低予算でできるプロモーションはそれなりにある。
14;オペレーションに関して、製品を作って販売するまでのサイクルをチャートにまとめる。大雑把なパフォーマンス指標を提示して、それを定期的に分析する仕組を提示する
15;マーケティングに関して、お金を掛けるだけの価値があったのか定期的に分析するためのチェックリストを出す。例えば、バナー広告に関して、どれだけの人がクリックして、その中でどれだけの人が買ったか。検索エンジンの上位に表示されているか(SEO対策)。顧客満足度の動きなど。
参考文献
Bragg and Bragg, "Developing New Business Ideas"
Barrow and et al., "The Business Plan Workbook"
Dibb and et al., "The Marketing Planning Workbook"
Chaffey and et al., "Internet Marketing"